グラブ選びの基準は今~高機能グラブの市場に登場した驚愕のモデル~

グラブ選びの基準は今 ~高機能グラブの市場に登場した驚愕のモデル~

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 現在、子ども達のグラブは細分化され、より高機能のモデルが多く存在する。しかし、原材料の高騰などでその多くが高額であるために、野球を高貴なものというイメージにしてしまっているアイテムのひとつにもなっている。

 野球をやる子どもが今よりもたくさんいた頃、グラブは何を基準に選んでいたのだろう。それこそ30年も40年も昔の話だが、子ども達はブランド(メーカー)や憧れの選手と同じモデルを欲しがった。しかし、現在のグラブ選びの基準は、それよりも重要な要素が大きく占めている。

子どもに合ったグラブとは

 そもそも学童が使用するグラブは大人用の小型化というイメージが常に存在し、野球人口が多い頃はそれでも市場は十分に活性化していた。ところが近年では少子化、ライバルスポーツや習い事の増加などから、学童野球人口は減少の一途を辿っており、グラブの市場も一昔前とは違う様相を呈している。学童用、各メーカーが“ジュニア用品”として凌ぎを削るその市場は細分化されモデル数が増加、エントリーモデルから、機能性が高く原料の革にこだわったフラッグシップモデルまで様々だ。各メーカーの開発競争も激化しており、軽量かつ操作性の高いモデルが次々と市場に送り出されている。

 そんな市場に満を持して高機能のグラブを登場させたのが、今回取材したフィールドフォース社だ。同社は学童野球のトレーニング用品を中心に、様々なヒット商品を生み出している、この世代に特化した専門メーカーである。同社があえて競争が激化するジュニア用グラブ市場に送り出してきたそのモデル名は『ステージ2』。筆者はそのグラブを取材するうちに、そこに秘められた驚きの事実を知ることになる。

「今度ステージ2が発売されることになったのですが、当社ではこのモデルより前に“ステージ1”というエントリーモデルを開発し、発売しています」

 そう語るのはステージ2の開発責任者である営業企画部課長の佐藤祐士氏だ。

「ステージ1はまだチームに所属していない、もしくは所属したばかりの未就学児を対象にしたモデルで、捕球面にシリコンラバーをドットで施してあり、ボールを捕球しやすくかつ、こぼれ難い構造になっています。さらに、スウェード調の革素材を採用することで、柔らかくて軽い。まさに野球に慣れ始めた初心者モデルのグラブであり、最初にキャッチボールの楽しさを知ってもらうために開発されたグラブなんです」

 そして、このステージ1をバージョンアップしたモデルがステージ2。一体どのあたりがバージョンアップされたのだろうか。佐藤氏が続ける。

「一般的なグラブは新品の状態では硬くて柔軟性がありません。さらに、小さめに設計されている学童用モデルとはいえ、平均的に400~500gの重さがあります。小学生の筋力では支えるのが難しく、またブカブカで手のサイズと合っていないケースも多く見受けられます。当社のステージ2はそのデメリットを解消し、最大の特長でもあるフィット感の良さが際立っています。軟式ボールを優しく捕球した時の気持ち良さを体感してもらえるモデルとなっているんです」

 このステージ2のフィット感の良さを引き出しているのは「バンドルフィット」というベルトの留め方にある。通常グラブをはめた時、手の甲を覆うベルト部分は小指側を紐で留めるのだが、このモデルの場合は親指側で留める。これにより親指側が上がり、手首を返した際に引っかかりのない形状になることによってストレスフリーの状態が生まれる。また、小指から一体型になっていることで余分な空間がなくなり、しっかりと手にはまる。捕球した状態が非常に良く考えられた構造に筆者は驚きを隠せなかった。

「他にも“スリットライン”と呼ばれる小指かけの下の部分の構造を一部メッシュ素材にしています。人間の手と同様に屈曲部分(フレックス)に切り込みを入れることで捕球を楽にし、また軽量化にも繋がっています」

 と、細かい部分へのこだわりを佐藤氏が解説してくれた。

ステージ1の表面(捕球面)。細かいドットでしっかりとキャッチできるように作られている
ステージ1の表面(捕球面)。細かいドットでしっかりとキャッチできるように作られている
「バンドルフィット」。特徴的な形状が手にフィットし、捕球をサポートする
「バンドルフィット」。特徴的な形状が手にフィットし、捕球をサポートする

ステージ2の素材へのこだわり

 さらに、筆者を驚かせたのがグラブそのものの素材でもある革だ。通常、グラブはその大部分に(去勢した)成牛の革を使用している。唯一、メスの牛の革を使用するのは“平裏”と呼ばれるグローブをはめた時に直接手の平が触れる部分だけだ。柔らかく肌触りの良い革質がこの部分にはマッチするため採用されているのだが、ステージ2はこの革をグローブの表面にも使用している。

「きめ細やかでソフトな手触りは指あたりの良さを生み出しています。メスの牛の革の特徴でもある“伸び”も十分に活かしたつくりになっています」

 素材選びからこだわり抜いた佐藤氏は語った。彼の大きな情熱がこのグラブには込められているのが非常に感じられる。

ステージ2に使用されている牝牛の半裁。上部が足の部分
ステージ2に使用されている牝牛の半裁。上部が足の部分

苦労のテスト期間を経て

 ここまでこだわり抜いたグラブに費やされた開発期間は約2年。何度もテストを繰り返し、ようやく完成した。

「機能的な部分の追求に一番時間を使いました。ミリ単位で調整を重ね、実際子ども達に何回も試作品をはめてもらい、その時にストレスがないかを毎回確認しました」

 そして、子どもたちからは試作の段階でどのようなコメントをもらったのかを尋ねると、佐藤氏は意外な答えを返してきた。

「特に具体的なコメントを求めるというよりは、はめた時の子ども達の表情に注目していました。多くの試作品をはめる中で、格段の笑顔を見せてくれたモデルが出た時、これでいけると感じました」

6月末の発売に向けて…

 さて、このグラブの具体的な仕様だが、カラーバリエーションは黒と赤オレンジの2色を採用している。商品化にあたり、佐藤氏は様々な球場に足を運び、子ども達に人気のカラーを確認して、採用色を決めたという。また、サイズはS(小学1~2年生用)、M(3~4年生用)、L(5~6年生用)の3サイズで展開する。そして価格だが、高機能グラブでは破格の8,900円(税別)と、市場では底値と言っても過言ではない価格で勝負する。

「やっと販売できるところまで辿り着きました。このグラブを付けて元気にフィールドを走り回る子どもたちの笑顔を早く見てみたいです。そして、難しい打球を処理する時のボールを捕るシーンにも早く出会いたい」

 そう語る優しい笑顔の佐藤氏はとても印象的だった。

カラーバリエーションは黒(左)と赤オレンジの2色
カラーバリエーションは黒(左)と赤オレンジの2色

 このグラブが発売される6月末以降、ステージ2をはめた子ども達のプレーに釘づけになる観衆たちの姿が容易に想像できてしまうのは私だけではないはずだ。

ステージ2の開発責任者、佐藤祐士氏。このグラブ開発に注がれた熱い時間を語ってくれた
ステージ2の開発責任者、佐藤祐士氏。このグラブ開発に注がれた熱い時間を語ってくれた


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