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学童野球のために ~フィールドフォースカップを終えて~

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第3回フィールドフォースカップは東京・文京区のレッドサンズが悲願の優勝を遂げ、幕を閉じた。この大会を主催し、学童野球を全力で支え続けるフィールドフォースの大貫社長と吉村専務にこの世代の野球をサポートする意義と将来の展望を語ってもらった。

学童野球人口の減少を真剣に考えていくと

 学童野球の現状は厳しい。全日本軟式野球連盟のデータによると、小学生の軟式野球登録チーム数は2010年から15年にかけて2400チーム以上が消滅している。ある評論家の話では、野球というスポーツの入口でもある学童のステージでの競技人口減少速度は少子化率を上回っているという。入口が減少していけば当然その後の世代での競技人口に大きく影響するのは間違いなく、日本中学体育連盟の発表によると、18年度から28年度の10年間で軟式野球の加盟生徒数は11万人以上が減少している。もちろん硬式野球に進むケースもあるだろうが、加速度的に若年層の野球人口は減少の一途をたどっていると言わざるを得ない。原因としてサッカー人口の増加や、少子化など色々と言われてはいるが、その中のひとつに“野球を気軽にできる場所がない”という問題がある。

 昭和世代の子どもたちは野球が身近にある『遊び』だった。公園や団地での壁当てを飽きるまで続け、空地で柔らかいスポンジやゴムボールでの三角ベースを楽しんだ。現在の子どもたちがゲームで遊ぶような感覚である。ところが時代は変わり、壁当ての的は姿を消し、公園では「野球禁止」が掲示される。学校は校庭を生徒が自由に遊ぶスペースとして開放しないといったように、もはや気軽に野球は楽しめなくなったのである。近隣の野球チームに入っても、大半は練習が土・日・祝日と、毎日ボールに触れる機会は激減してしまった。

急激な学童野球の人口減が心配される
急激な学童野球の人口減が心配される

 そんな現状に、勇ましく立ち向かう企業が「フィールドフォース」だ。学童野球の用品を製造・販売することに特化したメーカーとしてこの業界に参入してから10年が経過した。
同社の専務・吉村は言う。

「学童野球の現状を考えると、野球をやる環境があまりにも少ない。本当に省スペースで効率的な練習を行うための商品を訴求していって、入り口を広くさせてあげたいなと常に考えています」

フィールドフォース吉村専務
フィールドフォース吉村専務

このように、限られた環境で野球をすることを強いられている子どもたちのために、様々な用品を開発してきた同社だが、なかでも『バッティングネットオートリターン』は大ヒット商品として数多くの学童選手の練習を支えているロングセラーアイテムだ。そして、最近ではトレーニング用品だけではなく、ギアの開発にも余念がない。

フィールフォースの大ヒット商品『バッティングネットオートリターン』
フィールフォースの大ヒット商品『バッティングネットオートリターン』

「小さい子どもたちが普段使っているグラブを見ると、まぁ体に合っていないなと。ポケットのないグラブでやっている子はそれで落球して指導者に怒られ、野球をつまらないと思ってしまう。だったら子どもの目線に立ち、しっかりとボールをキャッチでき、その子の自信になるようにしてあげられるグラブを企画しようという話になり、社長を先頭に開発を進めました」

昨年の11月に販売を開始した入門用のグラブ『ステージ・ワン エボリューション』がそれだ。自ら開発を担当した大貫社長は言う。

「学童野球は年齢によって、ステージ1、ステージ2、ステージ3とあり、ステージ1というのは野球を始めたばかりのファーストステージです。その世代のために作ったのがこのグラブで、バットでボールを打つ快感と同じように、キャッチボールの時にボールを捕る快感を得られるように開発を進めました。捕球することの楽しさをとことん追求したんです。表面に(キャッチ面)にシリコンの突起があり、軟式ボールをちょうど捕球しやすくなっている。やはり、スポーツというのは快感を得られないとなかなか面白く感じられません。ボールをキャッチする快感を覚える前にやめてしまう子どももいる。それはメーカーである私たちの責任。現在、市場に出回っている少年用のグラブでは、キャッチする快感を最初に体験できるものが意外と少ないと思います。硬いグラブが多く、もう少し上のクラスに行ってから使うようなグラブや、冬になったらガチガチになってしまうようなビニール製のグラブをこれでいいと親が与えてしまっている。私たちはこれを『とりあえずグラブ』と呼んでいます(笑)。初めてグラブを贈る瞬間は、お子さんが将来に渡って野球を楽しく続けていくために一番大事なポイントだと思うのですが」

まずはボールをキャッチする快感を覚えて欲しい
まずはボールをキャッチする快感を覚えて欲しい

 そしてもうひとつ、学童野球の人口を減少させている原因のひとつとして考えられているのが、野球用具が高価であることだ。これに関しては吉村専務が語ってくれた。

「最近では野球がお金持ちのスポーツになってしまっています。子どもが野球を始めようとしたら、かなりの金額が掛かってしまっているからですが、グラブ1個買うにしても1万円以上出さないとならない。現在の親御さんたちにもう少し親しみやすいスポーツと認識されるには、用具の値段を考えるべきだと。バットにしても、高反発モデルは4万円を超える。『お金で距離を買っているのでは』と思うこともあります(笑)。当社の商品は結構皆さんが『安いね』と言ってくださるのですが、安いのではありません。適正価格なんです。入口である学童野球の用具は経済的で、使い勝手も良くないといけません。まずは野球をやってもらわなければいけないのですから」

そして誕生したフィールドフォースカップ

 常に学童野球の選手のために商品開発を行い、提供してきたフィールドフォース社が次に着手したのが“育成”だ。子どもたちの育成だけではなく、社員の育成も行っているという。そのひとつが、今年で3回目を迎える「フィールドフォースカップ」。各団体が新チームを始動させて間もない1月下旬から約1か月間に渡って行われるトーナメント大会で、入賞チームや優秀選手に贈られる豪華景品も魅力のひとつ。全員に参加賞も贈られる。

「当社のテーマは学童野球応援隊。春が本番の学童野球に対し、その前哨戦となる大会を開催したかったというのが『フィールドフォースカップ』を始めようと思ったきっかけです」
と吉村専務。東京・荒川の河川敷グランドで行われているこの大会は、元々荒川区の「荒川新春大会」を引き継ぎ、冠を付けたものだ。同大会を取り仕切っていた実行委員長・副委員長からアドバイスをもらい始めたという。最初は荒川地区と他の都内エリアのチームを入れて開催。そして、回を重ねるごとに埼玉や茨城などの関東エリアから強豪を集め、大いに大会を盛り上げている。そして、「この大会は社員を育成する場でもある」。と吉村専務は言う。

「もちろん大会を通じての企業PRも兼ねていますが、こういう大会をやらせていただくことは、当社の社員教育にも繋がっていると思っています。今回の大会も準備は一通り社員でやっていますので、このように携わることが社員ひとりひとりの成長に結びついていると思っています」
そう聞くと、ぜひこのような大会が全国的に広がっていくのを期待したくなる。

「実は先日も昨年の学童野球王者、大阪の長曾根ストロングスさんが主催されている大会を関西の『フィールドフォースカップ』としてスポンサードさせていただきました。将来的には関東の王者と関西の王者が戦うという大会を開催したら盛り上がるかなと思っています。他にも昨年度の関東新人戦王者、茎崎ファイターズさんが主催されている『東日本少年野球交流大会』の協賛など、どんどんその応援活動も広げています。また、女子の野球も盛り上げていきたいと思っていて、女子野球で有名な尚美大学が主催する『尚美カップ』という女子の大会も協賛しています。さらには、3月に開催される『オリックスバファローズカップ』という近畿圏の大会にメインスポンサーとして参加させてもらう予定です。1府4県から250チームが一同に会し、京セラドームで開会式を行います。参加チームのヘルメットには『フィールドフォース』のステッカーが貼られます。何故その大会をサポートしようと考えたかというと、その名称に少年少女野球大会というのが付いており、“少女”という文言が入っている大会は他にはないと思ったからです」

同社では各地の連盟主催の大会に出られない選手などを主体とした大会や低学年の大会など、ローカルでの活動を広げていきたい意向だ。大貫社長も続けて語る。
「小さい子どもたちにも野球を楽しんでもらいたい。幼稚園・一年生の子どもたちでも野球ができるよう後方支援を続け、底辺層の拡大をしていきたいと思っています」

ローカル大会の広がりを期待したい。写真は第3回フィールドフォースカップの閉会式で挨拶をする同社大貫社長
ローカル大会の広がりを期待したい。写真は第3回フィールドフォースカップの閉会式で挨拶をする同社大貫社長

これからの企業活動を考える

 話を「フィールドフォースカップ」に戻そう。吉村専務にこの大会で得られる最大のメリットを聞いた。

「私たちはこういった学童野球の関連商品をたくさん作っていますが、この大会を開催するまではエンドユーザーとの繋がりがほとんどなく、あくまでもB to Bでの関係性が大半でした。ですが、大会への関わりが持てたことから、子どもたちの表情を直接見ることができ、またどういう商品が必要になるかという製品開発のヒントを得られるようになりました。その点が最大のメリットだと思っています。正直、この大会が売上に直結しているとは、そこまで感じられません。まだまだそこまでの影響力はないのかなと思います。しかし、子どもたちが『この大会、絶対に取りに行こう』と言ってくれることも多いので、真剣に野球を打ち込める場として、そういう環境を提供するだけでもまずはいいかなと思っています」

 だが、大会の行われているグランドの隣では関係のないチームが試合前に同社のバッティングネットを使って練習している姿を見ると、認知度は上がっているようだ。さらに、大貫社長が続ける。

「関西の大会では、空いている時間に当社の製品(ネットなど)を使ってもらったり、グラブのメンテナンス方法をテントの中でレクチャーしたりとか、実際使ってもらい体感してもらうことで、当社の製品を分かってもらうための活動もやっていました」
同社は野球大会に携わる活動以外にも「ボールパーク」と名付けられた室内練習場をオープンさせ、近隣のチームや個人に貸出しを行っており、野球をできる環境を提供している。

「野球の練習はほとんどの子どもが土・日だけで、平日はテレビゲーム専門でボールを握らない。それで、子どもたちに平日も野球の練習する有効的な場所を提供したく、『ボールパーク』を作りました。また、同じ建物の上では学習塾も始めました。勉強を教えながら、野球も教える。どちらも同じで、勉強ができない子や、野球が下手な子は才能がないと言われがちですが、本当は量が足りないだけなんです。だったらまず量を増やしてみようよと。平日は保護者も忙しいから、ボールパークに来てたっぷりと練習をしてもらう。それが終ったら、塾で勉強です。『今は野球バカではダメだから、しっかり勉強もして立派な大人になるんだよ』というメッセージがこのスペースには込められています。頑張った分、勉強もできるようになるし、野球も上手くなる。『努力(やった分)は裏切らないんだよ』ということをここから発信していきたい」
と熱く吉村専務は語ってくれた。

大会中にグランドの脇にたくさんののぼりが立っていた。フィールドフォースの企業ロゴが大きくプリントされたその裏には『努力は裏切らない』の文字。聞くとこれは会社のテーマでもあり、吉村専務の座右の銘でもあるそう。このワードは子どもの育成、さらに社員の育成においても大切なテーマだというのが伝わってくる。

大会中の会場には『努力は裏切らない』の文言が入ったのぼりが
大会中の会場には『努力は裏切らない』の文言が入ったのぼりが

最後に吉村専務に今後のフィールドフォースの目標を聞いてみた。

「『2020年までにブランドの臨界点に達する』。学童野球に携わる人たちが『フィールドフォース』というブランドを聞いて、どういう会社か、どんなことをやっている会社か、というのを分かってもらっているというのが目標です。そのためにはこの3年間が大事だと思っています」
その頃にはきっと、全国各地でフィールドフォースが携わる様々な大会でロゴが大きく描かれたのぼりを目にし、同社の商品を使っている多くの子どもたちを見ることができるだろう。のぼりの「努力は裏切らない」の横を汗だくで駆け回る同社の若いスタッフを見た時、そう確信した。

休日返上で大会運営に取り組んだフィールドフォースのスタッフ
休日返上で大会運営に取り組んだフィールドフォースのスタッフ

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